曲を弾くという事
例えば,とても有名で,その上,短く、簡単な曲があるとします。
何の変哲もなく、誰でも,すぐに弾けてしまうような,簡易な曲です。
なのに、それを素晴らしく演奏する人がいて、
その演奏を聴くと,わけもなく,気分が落ち着いたり,涙が出たり,,,,
という事が,実際ありますね。
まあ,演奏家、とすると、
もしかしたら,話が大きく捉えられすぎるかもしれませんが、
逆に,例えば
自分が,弾けると思って弾いてみるのに、
うまく行かない、ということも、ありますね。
その時に,まず考えてみたい項目は、
弓の使い,と,ダイナミクス。です。
例えば,2音の音程の違うスラーの音が在るとして、
それを,試しにダウン、アップで,反復してもらうと、
私が,何も言及しない場合、
恐らくのところ半分以上の生徒さんが、
2音の音質、音量に、ムラのある弾き方をすると思われます。
なぜでしょうか.
弓元と,弓先での弾き方が,変わる場合や、
弓の返しで,弓を握り持ってしまっている場合、等には,顕著にその音ムラが,発生する様に思います。
要は、弦にかかる圧力が安定しないという事ですが、
常に、弓が安定しない音のまま、
音に、強弱のダイナミクスを付けるのは、
回転数が、終始異なるラジカセで、音楽を聴くようなものです。
もう一つ、音質、についても考えてみたいと思いますが、
音質に関しては、非常に、言葉で説明するのが、難しいですが、
例えば、弾く時に、
こんな音、 という、明確なイメージする音があるとします。
それを、頭の中で響かせつつ、弾く訳ですが、
大体は、実際はその音は、出ていません。(体験談)苦笑
イメージした音が、そのまま体現出来るなら、
私たちは、何の苦労もなく、素晴らしい演奏家に成っていますね.笑
ですから、出来るだけイマジネーションを膨らませ、
常に楽器を響かせ、音の細部に気を使い弓を使う。
弓の弦に対する角度や、他の弦にあたらない配慮、
スピード、圧力、使う弓の量、位置、弓の張り具合、
等々、考え得るすべての音質に繋がる行為を、並べ、
それらを、何度も何度も考えつつ、
何度でも楽器を弾く。
とても、大切な部分ですが、
実際、曲を弾く時に、一番削がれやすいのは、この部分な気がします。
音質が、とても重要な、音楽の要素であるにもかかわらず、
一番、それがなくても、とりあえず、弾くのに困らないから。
ではないかと、私は思います。
そこに、常に気を回しておく、
ということは、かなり大変な作業で、
たった1音だけでも、
自分の最高の響きの音を出す、
と言うのは、至難の業な気がします。
それを、懇切丁寧に、1音、1音、地道に紡いでいくわけですから、
大変な労力です。
そういった事が、
ベイシックな部分として、
どれだけ、そこにウエイトを置いた、意識的な練習が出来ているか、
を、普段の練習時に考えてみると良いかもしれません。