オサダ ヒロシ
人生の短さとゆたかさ
いま、ここにいることがきみの罪である。
きみは裁かれるだろう。
アグリッピヌスは、そう言われた。
判決がすぐにでるだろう。
アグリッピヌスが何をしたのか?
何も伝えられていない。
アグリッピヌスとは何者?
じぶん自身以外の何者でもなかった者。
生まれたとき、この世界の隅っこに
小さな肉体を投げだされたにすぎない者。
判決は有罪。きみは追放される。
アグリッピヌスが聞いたのは、だが別の声だ。
おまえはおまえ自身とたたかうがいい。
その声は言った。
そうして、おまえ自身を
自由と慎しみのなかに救うがいい。
では、とアグリッピヌスは言った。
アリキアまで行って食事をしようではないか。
ローマから追放された者が通る
アリキアは、途中の小さな町である。
食事の時間だから、今は食事をしよう。
私は私自身の人生の邪魔をしたくない。
なぜわれわれは、じぶんのでない
人生を忙しく生きなければならないか?
ゆっくりと生きなくてはいけない。
空が言った。木が言った。風も言った。
ロフトノ、マスター、クマガイサンノ、
アップヲミテ、
オサダヒロシガ、ナクナッタコトヲ、シッタ。
ブンガクズキナ、
クマガイサンノ、アップシテイタ、
オサダヒロシサンノ
シモ、スキダケレド、
ワタシハ、
コノ、シガ、イチバン、スキ。
スゴク、スゴク、スキ。
ダイガクジダイニ、
アンキスルホド、ナンドデモ、
ヨンダ。
ヒトハ、
ウマレテ、
ジブンノ、ヤクメヲ
マットウシテ、
ソウシテ、シヌ。
ソウアデアリタイ。
ナガク、ミジカク、
オツカレサマデシタ。